【第5回「まちなか広場賞」 受賞結果発表】

一般社団法人国土政策研究会
公共空間の「質」研究部会 まちなか広場賞審査会

 去る8月10日(土)、まちなか広場賞本審査会を開催いたしました。 本会の理念・評価方針に基づき議論を重ねた結果、下記の通り、各賞が決定しましたのでお知らせいたします。
(9月26日講評追記。)

【大 賞】:丸の内仲通りアーバンテラス(東京都千代田区丸の内三丁目2番3号)
<講評>
本賞では、地域性にそったかたちで多種多様な方々の日常的な居場所となり、広場のある地域を体現していることがまちなか広場の大切な価値と捉えています。
貴広場は、誰しもが知っている日本の代表的な通りの1つである丸の内仲通りを広場化したものであり、約20年の長い歳月を経て取り組まれ、今日の具現化の段階に至った点に敬意を表します。
丸の内という地域性をよく読み取り、丸の内仲通りの空間のハードデザインから、イベントや設置されるチェアやテーブル等のしつらえに関する質や見せ方といった空間の使い方のデザインにまで、趣向を凝らしながら、しっかりと地域性にあったものが施されることで、丸の内周辺における多数の就労者や観光客をはじめとした来街者にとって、日常的な居場所になっていることを高く評価しました。また、貴広場には、そのようなきめ細やかな作法が施せる管理運営の体制が、地元地権者や各行政関係者等との連携のもとに整っており、継続性を有しつつも、安定に落ち着かずに、着々と積み上がりを意識した活動展開をされている点も高く評価しました。
以上のような、コンセプトをしっかりと体現させるためのきめ細やかなディレクション&マネジメントと、それを実現・継続させるための連携体制による貴広場の活動が、丸の内仲通りを丸の内たらしめるリビングルームに仕立て上げ、そのような定着イメージを醸成してこられたものだと考えます。ゆえに、貴広場を大賞に選定いたしました。

【特別賞】:新とよパーク(新豊田駅東口駅前広場)(愛知県豊田市若宮町8丁目7番)
<講評>
「自由と責任」のもとでの広場活用を目指し、ワークショップ、実証実験を重ねて広場のルールを作ってきたこと、ハーフメイドという設計手法を用いたことを高く評価します。
まちのルールは誰が作るのかという問いに、パートナーズとの連携によるルール作りという解を提示し、禁止事項ではなくこの場所でできることを強調した発信を行っていることや、一つの広場単体で考えるのではなく、近隣の他の広場と共に考え広場の役割を考えていることで、使いづらい立地にある新よとパークでは目的性の高い利用を行うこととし、都市で禁止されがちな焚火、スケートボード、物販などの広場利用を可能にしています。
竣工後間もなく、現在はハーフメイドの過程のため、プロジェクトの全てが確認されているわけではありませんが、本広場が提示した新しい自治のあり方、使いづらい立地の広場における目的性の高い利用、ハーフメイドのプロセスの導入は日本中の公共空間に大きな示唆を与える可能性があると考えます。

【特別賞】:オガール広場(岩手県紫波町)
<講評>
約140人/㎢と低人口密度の地方都市において、高い求心性を有する広場を賑わい施設と一体で整備することで、まとまった空間に日常的に高い人口密度を生み出し、多様なコミュニケーションや学びといった豊かな都市的体験を可能にしているという点を高く評価し、特別賞に選定いたしました。
また、まちの魅力を創出する「人」を地域の最大の価値と捉え、その使われ方を重視しながら、地域の場所性や建築施設との関係性を丁寧に読み解いたランドスケープデザインによって、属性の異なる複数のアクティビティを居心地良く共存させていることも素晴らしい点と捉えられます。
本広場が紫波町のシンボルとして、人々の誇りとなる場所として今後も成長を続けることを期待します。

【特別賞】:渋谷キャストガーデン(東京都渋谷区渋谷1-23-21)
<講評>
都心ならではの集客力を活かしたイベントでの日常的な賑わいの様子が読み取れるなど、空間の完成度の高さと憩いと賑わいが共存する日常風景を創出している仕組みや工夫を高く評価しました。
しかし、居住者やクリエイターを巻き込んだ運営体制に一定の評価があったものの、クリエイターに対して自主性に依っていないようにも見受けられ、今後の積極的な関与による運営等への発展が期待されます。
また、渋谷と原宿というまちの結節点に交流空間となる広場空間を設け、行き交う人々の滞留空間をつくったことや、前面道路から大きくセットバックし、広い間口を設けることで生み出された空間を緑陰空間として効果的に活用している点を評価しましたが、後背の住宅エリアとの関係性や樹木等による目隠しに留まっている隣接地との関係性が今後どのように構築、改善されまちとの繋がりが大いに発展することを期待します。

【奨励賞】:三角東港広場 羽未の公園(うみのこうえん)(熊本県宇城市三角町)
<講評>
東港の再整備をきっかけに、「空間のリノベーション」というコンセプトのもと、駐車場を広場とすることで、駅・桟橋・物産館・緑地広場を連携させ、市民や来訪者など多様な人が思い思いに過ごす場として、新しい日常の風景を創出したことが最大の評価点です。
また、三角の瀬戸という地域の資産を大事にしながら、駅と桟橋をつなぐ動線としてキャノピーが象徴的な風景をつくりだしていることも高く評価しました。
人が集まるきっかけがイベント的ではないかとの指摘もありましたが、地元大学が設計段階だけではなく維持管理段階まで関わることで、コンセプトを継承する取組もなされており、多様な世代の人々と整備後のイメージも共有しながら協働して作り上げてきた広場を、継承し、育てていく思いをより具現化して頂き、さらに市民や観光客が日常的に利用する、三角らしさを発信する広場として育つことを期待します。