第2回「まちなか広場賞」 審査結果
公共空間の「質」研究部会 まちなか広場賞審査委員会
「第2回まちなか広場賞」には、全国9つの広場からご応募頂きました。いずれのまちなか広場もそれぞれの地域の中で独自の取り組みをされており、まちにとって価値ある 「場」を提供しているものでした。そうした広場の中でも、特に公共空間の「質」研究部会 まちなか広場賞審査会の考える「豊かさ」や「価値」を持った広場について、下記の通り各賞を決定致しましたのでお知らせします。
【大賞】もぶるテラス・みんなのひろば(愛媛県松山市)
<審査講評>
地域の人々との協働によって段階的に整備するプロセスをとっており、そのようなボトムアップ型の取り組みを官民学の連携による戦略的な運営と体制 によって担保している点が最大の評価点です。本賞の主旨を十分に理解いただき、豊かな広場の利用シーンがどのような要素やプロセスによって生み出 されているか、その一連のつながりがわかりやすくまとめられていたことも非常に大きな評価点です。民地という底地の性質上、利用や活用の自由度が 高く実験的な管理運営がしやすい場所だからこそ、そうした仕組みも有効に働いていると考えます。また、地域における広場の存在価値を的確に認識 し、未来へとつながる時間軸の中での戦略的な利活用や仕組みづくりを図っていることも非常に重要であると考えています。そしてなにより、そうした 背景に支えられて生み出されている日常的な広場の多様な使われ方が魅力的であり、本来日本に息づいていた空間を読み解く力、仮設的に場の領域やつ ながりを生み出す力を利用者からうまく引き出していると感じられるところに、この広場の大きな魅力を感じます。
【特別賞】HELLO GARDEN(千葉県千葉市)
<審査講評>
私有地の暫定利用である点をポジティブに捉え、ハード面、ソフト面の両面でトライアンドエラーの精神でプロセスを重視し二年間アップデートを繰り 返してきた取り組みを高く評価します。多種多様な取り組みを実践し、価値観の異なる人々の興味を引き出している活動も効果的であると考えます。ま た私有地で自由に行え、リスクも負える場所であるからこそ地域の人々の主体性を意識されている点、広場の役割として居場所作り、環境美化、個人の 生活力の向上などを見据えている点についても高く評価します。今後、更なる広場の活動の広がりとして、地域への波及に向けてどのような取り組みが なされていくのか、現在は暫定利用である広場の未来についてどのように考えていくのかといったことに期待しています。
【特別賞】三軒寺前広場(兵庫県伊丹市)
<審査講評>
三軒寺前広場は、昭和63年の供用開始以来、使い手である市民の意見を聴取する機会を多く設け、造り手である市が積極的かつ継続的に再整備に取り組 み、担い手として第三セクターのまちづくり会社が広場の運営に取り組んでいることが最大の評価です。また、JR伊丹駅・阪急伊丹駅の両主要駅間に位 置し、東西と南北を結ぶ2軸の歩行者優先道路に接して計画され、周辺店舗や公共施設への回遊拠点・生活動線・イベント広場として機能していること を評価します。広場に面する酒造会社が井戸水を提供、カフェがテープルや椅子を提供する等、広場に面する事業者との協力関係を築いていることは日 常的に利用される空間や機能づくりに大きく寄与していると考えます。今後、民間事業者との連携も検討されており、更なる活用や日常利用にも配慮さ れた空間の質の向上等が期待されます。
【特別賞】ベルテラスいこま「ベルステージ」(奈良県生駒市)
<審査講評>
ベルテラスいこま『ベルステージ』は、市街地再開発事業による整備手法を採用している中、「使われる広場でなくては意味がない」という認識のも と、事業施行中において、実際に利用するであろう市民のニーズをしっかりと把握し、持続可能な賑わいの創出策とその管理運営方法について、整備と 並行して検討した点が最大の評価のポイントになります。 現在では、当まちなか広場ではたくさんのイベントが実施されており、愛称のとおり、市民の皆様の「立派で大変良い舞台」となりつつある様がうかが えます。イベント対応の充実した設備やテントや椅子、テーブルなどを市民が利用できる等の現場密着かつ自立意識型の管理・運営体制の賜物であり、 「使われることを想定してつくる」という意識による事前検討を経た整備が功を成していることだと思われます。特に、広場の管理運営事務所機能を兼 ねたアンテナショップの独立採算の運営や自動販売機の売り上げの広場の活性化事業への充当等、自立したマネジメント体制に関する意識の高さは他事 例にも引けを取らないほど高く評価できることです。 まちなか広場は、日常的に多様な人びとが集い、各々が縛られず、多様な行為が生まれている状況をつくりだすことが望ましいかたちです。イベントの ような非日常(ハレ)的な行為だけではなく、多様な日常(ケ)的な行為が多分に生まれる状況をつくりだす工夫が今後の課題と考えます。本当の意味 での暮らしの「舞台」になることを期待しています。
【特別賞】御茶ノ水ソラシティ ソラシティプラザ(東京都千代田区)
<審査講評>
本広場は、長年の地域課題であった歩行者アクセスといった命題に対して計画初期から関係者が真摯に向き合っています。また、施設コンセプトでもあ る“開放的なオープンスペースの確保”によって、地域内外の利用者へ多様な活動の場を新たに提供しながら、周辺施設と連携して地域の魅力を創出して いる点を評価しました。また、地上・地下といった2層構成の広場であることから、利用者がそれぞれの目的に応じて居場所を選択することができる自 由度が感じられます。都会の中で緑と文化を近くに感じながら快適に過ごすことの出来る空間の確保、ならびに平休日・雨天時を問わずに年間を通じて 様々なシーンを創出する空間計画となっている点は、高密な都市環境におけるまちなか広場の担う役割として高く評価しました。
【奨励賞】まちなか防災空地(兵庫県神戸市)
<審査講評>
20年近くに及ぶ取り組みの蓄積により市内各地に広がるまちなか防災空地が、人口減少社会を迎えている日本において、都市空間におけるオープンスペ ースのあり方、あるいは今後の住環境を問いかける社会的役割や存在意義は審査員一同、とても大きなものだと捉えています。制度的な担保を持ったう えで、地域組織ごとに異なる状況や特徴をそれぞれのまちなか防災空地の整備や活用方法に活かすためのプロセスの構築、41か所という多様な空間の設 えや利用状況の一端が伺える点も高く評価されました。街区のアンコ部分に整備されることが多いとされる「まちなか防災空地」は、元来の日本的な広 場空間である会所地とも通じるものがあると捉えることができ、まさにセミパブリック・セミプライベートな曖昧な空間を現代的に再解釈する可能性を 持つものであると考えられます。41か所の防災空地を取り上げ一つのまちなか広場と捉えている点も特徴的であり、今後より一層多くのまちなか防災空 地が創出されること、防災空地の取り組みが日本各地に広がることも期待されます。
【奨励賞】ハピテラス(福井市にぎわい交流施設屋根付き広場)(福井県福井市)
<審査講評>
ハピテラスは、計画段階から広場の多種多様な利活用を想定して整備されていることが最大の評価点です。天候に左右されないための大庇や、大型ビジ ョン・仮設ステージ・音響給排水電気設備・備品等の様々な設備が備えられ、さらに、利用に応じたレイアウトも検討されていること、店舗配置や外装 の設えといった、広場周辺の機能・ハードの点から周辺との一体性・連続性に配慮した計画となっていることは、今後の模範になりうる計画であると考 えます。 また、ハピテラスが整備されるプロセスにおいて、JR福井駅前の貴重な空間を広場として設えることを選択し、官民連携のもと合意形成を図ったうえ で、広場の位置づけを担保する権利保全や条例制定を行いながら完成に至っていることも高く評価されます。 開業直後の多忙な時期にも関わらず、「まちなか広場賞」へ応募頂いたことに感謝申し上げると共に、オープニングイベント時にかつてない集客をもた らしたハピテラスが、今後多様に利用され、まちの魅力を高めていくことを期待しつつ、来年の「まちなか広場賞」においてその様子が見られることを 審査委員一同楽しみにしております。
■応募作品一覧 ※応募書類受付順
1.世田谷区役所ケヤキ広場 | 東京都世田谷区 |
2.三軒寺前広場 | 兵庫県伊丹市 |
3.ベルテラスいこま「ベルステージ」 | 奈良県生駒市 |
4.もぶるテラス・みんなのひろば | 愛媛県松山市 |
5.池袋駅東口グリーン大通り | 東京都豊島区 |
6.まちなか防災空地 | 兵庫県神戸市 |
7.HELLO GARDEN | 千葉県千葉市 |
8.御茶ノ水ソラシティ ソラシティプラザ | 東京都千代田区 |
9.ハピテラス(福井市にぎわい交流施設屋根付き広場) | 福井県福井市 |