【第3回「まちなか広場賞」 受賞結果 発表】

一般社団法人国土政策研究会
公共空間の「質」研究部会 まちなか広場賞審査会

本日、第3回まちなか広場賞の受賞結果を発表致します。
今回も、それぞれ個性豊かな8カ所のまちなか広場からご応募を頂きました。
いずれも素晴らしい広場で、審査会の議論も白熱しましたが、本会の理念・評価方針に基づき、下記の通り決定致しました。

【大賞】姫路駅北にぎわい交流広場(兵庫県姫路市)
【特別賞】品川シーズンテラス(東京都港区)
【特別賞】富士山本宮浅間大社 神田川ふれあい広場(静岡県富士宮市)
【奨励賞】くらす広場(東京都稲城市)
【奨励賞】左近山みんなのにわ(神奈川県横浜市)
【奨励賞】ファーストスクエアガーデン(東京都千代田区)


【大賞】姫路駅北にぎわい交流広場(兵庫県姫路市)

< 総 評 >
広場が生まれたプロセス自体を最も高く評価しました。当初、市から提示された計画案に対して地元が対案を出し、多様な人々が関わりながら多くの時間と濃密な議論を経てそれが実現されたというプロセスは、広場としての価値に留まらず、都市計画の観点から見ても日本における数少ないアドボカシー・プランニングの実現事例であると言えます。
豊かな日常の利用シーンも、綿密に設計された空間デザインや運営の仕組み、隣接する店舗等の機能との相乗効果によって生み出されていることが理解でき、広場が大いに利用されている状況が街にとっても波及効果を与えている点が素晴らしいと感じます。
このような状況を維持・発展させるための鍵である運営体制がきちんと構築され、豊かな広場のシーンが今後も末永く持続されることを期待します。
(園田 聡:都市コンサルタント[都市デザイン])


【特別賞】品川シーズンテラス(東京都港区)
ー 多様なアクティビティが彩りを与えるテラス ー

< 総 評 >
公共施設である水再生センターの再整備を契機とした開発事業において、新たなコミュニティを創出するための取組みを開発事業初期段階から展開し、開業から二年が経過する中で、地域に認知された居場所として成長している点を高く評価しました。
公共施設の老朽化に伴う再整備を契機としたエリア開発の増加が想定される中で、 PRE(公的不動産)の活用による経済価値(オフィス需要)と社会的価値(文化・地域性)の双方を備えた空間を生み出していることを評価します。
今後、品川エリアのなかで、周辺施設や地域資源を繋げるような「アクティビティの結節点」として、多様な活動と活動継続を支える支援者の輪が広がる展開を期待します。
(西村 雅博:監査法人[都市計画])


【特別賞】富士山本宮浅間大社 神田川ふれあい広場(静岡県富士宮市)
ー 日常空間としての原風景の再生 ー

< 総 評 >
本広場の空間のあり方として、周辺の環境を読み解き、周囲の特性を本広場内にうまく取り込んでいる点について高く評価しました。
隣接する河川や河川沿いの歩道など、まちに対して開いている側についてはしっかりと開いて計画し、浅間大社の参道側については「仕切る」ようにとの関係者の要望も踏まえながらも、つながる仕切り方で計画するなど、周囲の状況や環境をしっかりと読み解き、自然な取り込み方をしている点を評価しました。
また、ハレ(非日常/「聖」)とケ(日常/「俗」)の分別を明確に捉えており、本広場空間 のしつらえと、ハレとケにおいてそれぞれ自然に生まれてくる行為がしっかりと関連付けら れていることが伺え、気持ちの良いものでした。まさにハレとケをつなぐ広場として計画、 運用されており、評価しています。
「地域の暮らしの質を高める」ものになるべく、地域の方々の暮らしに寄り添い在ることが応募資料の記載内容からも読み取れ、本広場の全体的なバランスの良さ、高さについて評価しました。
今後も、地域の暮らしへどんどんと落とし込まれ、同化していく様をよく観ていきたいと思いました。今後のあり方を楽しみにしています。
(萩野 正和:まちづくりコンサルタント[地域デザイン] )


【奨励賞】左近山みんなのにわ(神奈川県横浜市)
ー 住民による住民のための広場 ー

< 総 評 >
管理組合が所有し、住民自ら整備した、住民主体の広場整備の取り組みを高く評価します。 屋外空間を団地の最大の価値と捉え、日常利用に向けて計画を行い、建て替えではない団地再生の手法として取り組んでいることは、日本中の団地が抱える問題解決へのモデルケースになる可能性があるのではないかと考えます。
運用開始直後の応募であることもあり、利用実態や運営体制が明確に表れていませんが、今後、様々なシーンが日常的に見られる運営がなされていくことに期待します。
(鈴木 美央:研究者[建築意匠設計])


【奨励賞】くらす広場(東京都稲城市)
ー 企業×市民で育むプラットホーム ー

< 総 評 >
民間企業である鉄道事業者が地域における広場の価値を認め、広場を拠点とした地域全体の価値向上を視野に入れた上で、あらゆる面において地域住民を「主役」にすることに徹底しながら取り組みを進めている点が、本広場における最大の評価ポイントです。
稲城市域在住メンバーで構成され、広場のイベント等企画・管理・運営を一体的に担う法人を設立したことに加えて、目の届く範囲でメンバーが常駐しながら利用者に寄り添った広場の運営がなされていること、「ステイスタッフ」という幅広い人が運営に関われる体制づくりや仲間の輪を広げる仕組みづくりが仕立てられていることも高く評価しました。
また、特徴的な白い鋼製フレームが広場の求心性を生み出し、賑わい感を創出する装置としても活用され、植栽エリアが定期的に地域の方に手入れされていることで、高架下という無機質になりがちな空間が親しみやすく愛着の持てる場となっていることが伺えます。
運営主体の自主事業による広場の自立的運営に向けた取り組みも今後の展開・発展が期待でき、さらに稲城市内外の多世代・多様な人たちの暮らしに寄り添った広場となった様子を、再び「まちなか広場賞」にご応募いただけることを楽しみにしています。
(高野 哲矢:都市コンサルタント[都市デザイン] / 西大條 晶子:地域コンサルタント[市民活動])


【奨励賞】ファーストスクエアガーデン(東京都千代田区)
ー 公開空地のバリューアップ ー

< 総 評 >
大手町という都心の好立地にありながら、都市における広場の価値を強く認識し、従来非収益部分とされる広場への全面的なリニューアル投資を行った点が、本広場における最大の評価ポイントです。
時代変化に伴う公開空地の役割について、抜本的な見直しを行った先進的な事例として高く評価しました。
第一にオフィスワーカーにとっての身近な存在となることを計画初期から関係者間で共有し、誰もが気軽に立ち寄れる・生活に寄り添い愛される“都市の庭”を、周囲と丁寧に創り上げていこうとする一貫した姿勢に共感しました。また、近隣との境界を超えた豊かな緑があるだけでなく、緑が人との心地よい距離や視線の関係性を巧みにコントロールしていることから、本広場ユーザーの愛着が時間をかけて醸成され、都市の新たな緑の価値を発信する拠点となっていく可能性を感じます。
運用開始から間もないこともあり、今後さらなるユーザーの声を蓄積してハード・ソフト両面での充実が図られること、そして大手町という立地にある本広場が国内外の公開空地に対して影響を与え、都市再生における先導的な広場として注目されることを期待します。
(圓谷 彩永子:設計事務所[環境評価])


■応募広場一覧(50音順)
1.片町きらら広場[石川県金沢市]
2.くらす広場[東京都稲城市]
3.左近山みんなのにわ[神奈川県横浜市]
4.品川シーズンテラス イベント広場[東京都港区]
5.Dragon Court Village[愛知県岡崎市]
6.ファーストスクエアガーデン[東京都千代田区]
7.富士山本宮浅間大社 神田川ふれあい広場[静岡県富士宮市]
8.姫路駅北にぎわい交流広場[兵庫県姫路市]